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外国法人が日本子会社を設立する場合の消費税のステータス(設立一期目および二期目)

By Ryohei Yanagihara

消費税法上、全ての法人の消費税のステータスは、下記のいずれか(課税事業者または免税事業者)になります。

1.消費税の申告・納税義務がある法人(課税事業者)
課税事業者は、下記に記載の(1)売上消費税から(2)仕入消費税を控除した残額(確定消費税額)を計算・申告した上で、税務署に確定消費税額を納付する義務を有します。一方で、(1)から(2)を控除した結果がマイナスになる場合には、そのマイナス部分につき、税務署から還付される権利を有します。
(1)売上消費税
    日本国内での課税取引(譲渡した資産や提供した役務)につき受領した対価のうち10/110に相当する金額
(2)仕入消費税
    日本国内での課税取引(取得した資産や提供された役務)につき支払った対価のうち10/110に相当する金額

2.消費税の申告・納税義務がない者(免税事業者)
免税事業者は、上記の(1)から(2)を控除した確定消費税額を税務署に納税する義務を有しません。一方で、(1)から(2)を控除した結果がマイナスになる場合に、そのマイナス部分につき、税務署から還付される権利を有しません。

よって、免税事業者ステータスが常に有利という訳ではなく、日本子会社が行うビジネスを考慮した上で、日本子会社の消費税が納税ポジションか還付ポジションになるかを予想し、消費税のステータスを選択することが重要になります。以下、外国法人が日本子会社を設立した場合に想定される、設立一期目および二期目の消費税のステータスについての説明となります。

1.設立した日本子会社の資本金が1,000万円以上の場合
設立の日から課税事業者となります。

2.設立した日本子会社の資本金が1,000万円未満の場合
設立一期目および二期目は原則として免税事業者となることが可能です。但し、日本子会社の選択により、一定の届出を期限内に提出することで、自発的に課税事業者を選択することも可能です。よって、消費税のステータスを日本子会社の意思で決定できることになります。以下、日本子会社のビジネスの内容に応じた消費税ステータスの選択についてのコメントとなります。

  1. 外国親会社向けに役務を提供する日本子会社である場合
    日本子会社の業務が、外国親親会社に対する役務提供のみである場合には、日本子会社は消費税の還付ポジションになることが想定されます。よって、自発的に課税事業者を選択することが望ましいと考えられます。この場合の消費税の還付については、下記のリンクもご参照ください。
    https://awitax.jp/jp/insight/consumption/21/
  2. 日本子会社の顧客の概ねが事業者である場合
    この場合には、日本子会社が消費税の納税ポジションになることが想定されます。よって、消費税の観点からは、免税事業者ステータスの方が日本子会社にとって有利になると考えられます。
    しかし、2023年10月に導入された消費税インボイス制度により、「免税事業者から取得した資産や提供された役務について支払った対価に含まれる仕入消費税を、確定消費税額の計算上、原則として控除できない(但し、2023年10月から一定期間は仕入消費税額の8割だけは控除可能)」取り扱いになったことから、事業者である顧客から、日本子会社が課税事業者となる様に依頼を受けることも想定されます。よって、免税税業者であることの消費税法上のメリットと、顧客との関係性(免税事業者を選択することによる売上の減少額)を比較して、消費税ステータスを決定することが望ましいと考えられます。
  3. 日本子会社の顧客の概ねが消費者である場合
    この場合においても、上記2.(2)の場合と同様に、日本子会社が消費税の納税ポジションになることが想定されます。よって、消費税の観点からは、免税事業者ステータスの方が日本子会社にとって有利になると考えられます。
    なお、日本子会社の概ねが消費者である場合には、上記2.(2)の様に、事業者である顧客から課税事業者となる様に依頼を受けることは少ないと想定されます。よって、消費税法上のメリットのみを考慮し、免税事業者を選択することが望ましいと考えられます。
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