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外国法人の消費税の納税義務者の拡大(2024年税制改正)

By Ryohei Yanagihara

2024年に改正された消費税法により、消費税の納税義務対象となる外国法人の範囲が大幅に拡大しました。詳細は下記の通りです。なお、本コラムにおける外国法人とは、日本に恒久的施設を有していない外国法人を指している点、ご留意ください。

1. 2024年改正前
外国法人が消費税の課税取引(※)を開始した場合であっても、一定の要件のもと、消費税の課税取引を開始した事業年度及びその翌事業年度は消費税の納税義務が免除されておりました。よって、例えば、12月決算の外国法人が2022年中に消費税の課税取引を開始した場合であっても、一定の要件のもと、2022年と2023年は消費税の納税義務が免除されておりました。

(※)消費税の課税取引とは主に下記の様な取引をいいます。
・日本国内に所在する資産の譲渡または貸付
・日本国内で行われた役務の提供
・日本国内の会社や消費者に対する電気通信利用役務の提供(例:ゲームや音楽の配信)

2. 2024年改正後

  1. 資本金が1,000万円以上である外国法人
    資本金(※1)が1,000万円以上である外国法人が消費税の課税取引を開始した場合には、消費税の課税取引を開始した事業年度から日本消費税の納税義務が生じます。米国法人を例に取りますと、為替レートを1USD=155円と前提とした場合には、資本金がUSD65,000以上である米国法人は、消費税の課税取引を開始した事業年度から消費税の納税義務が生じることになります。
  2. 資本金が1,000万円未満である外国法人
    改正後であっても、一定の要件(※2)のもと、消費税の課税取引を開始した事業年度及びその翌事業年度は消費税の納税義務が免除されます。但し、2023年から導入されたインボイス制度により、取引先の仕入税額控除を考慮して、消費税の適格請求書発行事業者登録番号を取得する場合には、消費税の納税義務は免除されません。

以上より、2024年改正後においては、消費税の課税取引を開始した多くの外国法人に対して、日本でビジネスを開始した初年度から消費税の納税義務が課されると理解いただいて差し支えないかと思います。
なお、上記の改正は2024年10月1日以後に開始する外国法人の事業年度から適用になります。よって、12月決算の外国法人であれば2025年1月1日から適用になります。

(※1)資本金とは日本の会社法に基づく概念であり、外国法人の財務諸表の株主資本の内どの項目が資本金に該当するかについては、日本法人税法は明確に規定していません。よって、厳密には、「日本の会社法における資本金の意義」と「外国法人の株主資本に計上されている各項目についての、外国法人居住地国における法的な意味合い」を比較し、外国法人の株主資本の中から、日本の会社法における資本金に該当する項目をピックアップする必要があります。但し、一般論としては、外国法人のShare capitalやCapital stockを資本金として取り扱い、Capital reserveやCapital surplusは資本金として取り扱わないことが多いと思います。

(※2)ここでは詳細は割愛しますが、一定の要件についても、消費税の納税義務者を広げる方向で改正が入っております。

3. 消費税の納税義務が生じた場合の手続き
外国法人に消費税の納税義務が生じた場合には下記の様な手続きが必要となります。

  1. 初回に税務署に提出する届出
    1. 課税事業者届出書
    2. 消費税納税管理人届出書
    3. 適格請求書発行事業者の登録申請書
  2. 毎年必要な税務申告と納付
    外国法人の事業年度末から2月以内に、その事業年度の消費税の申告と納付が必要になります。

4. その他
日本の消費税は、米国の州税である売上税ではなく、欧州のVAT(Value Added Tax)に近い間接税です。よって、外国法人が消費税を申告および納税する際、その外国法人は売上時に預かった消費税(仮受消費税)から仕入時に支払った消費税(仮払消費税)を控除することが可能です。

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