株式会社と合同会社の税務上の取扱いの違い
By Ryohei Yanagihara
株式会社と合同会社の両方に法人税及び消費税が課され、税額の計算に大きな差異はありません。外国法人が日本子会社を設立する場合に想定される税務上の差異は下記二点程度となります。
- 多くのケースで、会社設立時に納める登録免許税が、株式会社よりも合同会社の方が9万円安い。
- 外国親会社が合同会社の業務執行社員であり、その職務執行者が日本国内で勤務している場合において職務執行者が得る報酬は、厳密には、(a)合同会社は業務執行の役務提供対価を外国親会社(業務執行社員)に支払い、(b)その上で、外国親会社が職務執行者に給与を支払うという整理になります。(a)については、支払先が法人ではあるものの役員給与の損金不算入規定が適用されますので、定期同額給与となる様なアレンジが必要となります。また、法人が提供する役務提供という整理になりますので、原則として消費税法の課税取引になると考えます。(b)については、外国法人からの給与の支払であり、その支払いに際して源泉徴収がなされないことから、職務執行者自らが所得税の確定申告を行う必要があります。上記のうち(1)については一回だけの費用であることから、株式会社・合同会社の選択判断に与える影響は軽微かと思います。しかし、(2)については、外国親会社も含めた税務上の検討・整理が必要になる点は合同会社の若干のデメリットと言えるでしょう。
なお、法務の観点からは定款設計や機関設計に柔軟性があることが合同会社のメリットとして存在する一方、ビジネスの観点からは株式会社の方が合同会社よりも信用度が(多少は)高い傾向にあると思います。
最後に、米国税務の観点から一点補足として、米国親会社が日本子会社を合同会社で設立した場合、一定の要件のもとで、日本子会社の利益/損失を米国親会社の米国税務上の所得として取り込むことが可能です(いわゆるパススルー課税)。よって、米国から日本へ進出する場合で、日本子会社がその設立から一定期間は赤字ポジションになることが見込まれているのであれば、合同会社を選択して米国税務上のメリットを得ることも選択肢になります。但し、米国でパススルー課税になるか否かに関わらず、日本では合同会社の利益に対して常に法人税が課される点はご留意ください。
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