外国法人が日本に恒久的施設(Permanent Establishment: PE)を有する場合の課税関係
恒久的施設(PE)に対する課税の概要
原則として、外国法人は、事業所得について日本法人税を申告・納付する義務はありません(※)。但し、外国法人が日本国内で一定の機能(Permanent Establishment: PE)を有する場合には、当該外国法人の所得のうち、当該PEに帰属する所得に対して日本の法人税が課されます。
(※)ここでの事業所得とは、製品の製造・販売やサービスの提供等、営業活動を含む継続的な経済活動をイメージしていただければと思います。なお、日本法人から支払われる配当や利子、一定の日本法人株式の譲渡益等、いわゆる投資により生じる所得については、日本にPEを有しない場合であっても日本で課税されます。
恒久的施設(PE)とは
PEとは、日本国内に存在する一定の場所や機能であり、具体的には、外国法人の日本国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、作業場等をいいます。よって、外国法人が日本国内で事務所を賃借し、当該外国法人の従業員が当該事務所で業務を行っている場合には、当該外国法人は原則としてPEを有していることになります。
なお、PEから除外される例外として、外国法人の事業の遂行にとって準備的または補助的な活動のみを行う日本国内の拠点(駐在員事務所)はPEから除かれることとなります。
PE該当性は、その外国法人の日本国内における活動を総合的に観察した上で個別のケース毎に判断されるべきものですが、一般的な判断として下記の通り事例を提示します。
- 駐在員事務所に該当するケース(PEに該当しないケース)
- 外国法人の従業員が日本国内で市場調査を行う段階(日本に進出すべきか否かを判断する過程であり、日本進出を決定する前の段階)
- 日本国内での事業を開始する前に、日本人従業員の採用活動を行う段階
- 日本国内の事務所に所属する従業員が自社製品や自社サービスのプロモーション(展示会等)を行う段階(但し、プロモーションの結果、個別の見込顧客との交渉が始まった段階でPEに移行)
- 日本国内の事務所に所属する従業員が、日本国内での事業のための許認可を取得する段階
- PEに該当するケース
- 日本国内の事務所に所属する外国法人の従業員が、見込顧客への営業活動を行っている場合
- 外国法人の販売した製品の維持修理などのアフターサービスを、日本国内の事務所に所属する外国法人の従業員が行う場合
外国法人が日本に進出する際には、一般的に、市場調査(マーケティング)→日本人従業員採用→営業活動開始というステップを辿ることが多いかと存じますが、このステップを辿る場合には、遅くとも営業活動開始の段階では、外国法人はPEを有していることになると考えられます。
上記に記載したPEの意義では、事業所PE(外国法人の日本国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、作業場等)について説明しておりますが、その他のPEの類型として、建設PE(一定の建設工事等の場所)や代理人PE(外国法人のために契約を締結する権限のある一定の者)が存在する点、ご注意ください。
恒久的施設(PE)に該当するとどうなるか
外国法人の所得のうち、PEに帰属する部分の所得に対して日本の法人税が課されます。「PEに帰属する部分の所得」とは、当該PEが当該外国法人の本店から分離・独立した法人であると仮定し、下記を考慮した上で、当該PEに配分されるべき所得をいいます。
- 外国法人の本店が負うリスク、PEが負うリスク
- 外国法人の本店が果たす機能、PEが果たす機能
- 外国法人の本店が使用する資産、PEが使用する資産
- 外国法人の本店が締結する契約、PEが締結する契約
PEを有する外国法人は、上記の分析を通じて当該PEに帰属する所得および法人税額を計算し、PE帰属所得に対応する法人税を外国法人の事業年度末から2か月以内(一定の場合には延長が可能)に日本の税務当局に対して申告・納付する必要があります。
恒久的施設(PE)に該当する場合の対応
上記の通り、PEに該当した場合には、PE帰属所得を把握するための分析が必要となることから、会計面や税務面での検討に要する工数と費用が生じます。当該工数と費用を軽減するために、PEに該当する段階で日本法人(日本子会社)を設立することが一つの選択肢となり得ます。支店を含むPEと日本子会社の税務上の取り扱いについては、下記のインサイトもご参照ください。
https://awitax.jp/jp/insight/corporate/17/
最後に、上記は日本の国内法に基づいた記述であり、日本が締結する各国との租税条約により、上記の課税関係が修正される可能性がある点、ご留意ください。
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